唯一無二の意匠住宅

YASUSHI HORIBE建築家 堀部安嗣氏の仕事

どこか懐かしく やさしく 心地よく
住む人の心に寄り添う自然素材の家

絵画でも音楽でも、その作品にはどこか作り手の人となりが感じられるもの。
建築においても、建築家の考え、人格はそのデザインに反映されるものです。

だからこそ、どこよりも快適な空間であって欲しい暮らしの場である住宅の設計を「どんな人」に頼むのか、間違いのない選択をしたいところ。

堀部安嗣氏は数々の建築賞を受賞された日本を代表する建築家として様々な雑誌や書籍、メディアでも知られる著名人です。世界のセレブが注目する最高級クルーズ客船「ガンツウ」などの仕事でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、氏が最も多く手がけているのは実は一般の住宅で、そのスタイルは穏やかに優しく、どこか堀部氏の人柄を感じさせるものです。

長く住むうちに古臭く感じられるようになってしまったり、すぐに飽きてしまうような無駄な装飾は置かず、自然素材の質感を生かしたシンプルなラインで描かれる空間は、古来より日本にあった伝統の意匠に通じるもの。この国の気候に育まれ、時代時代の職人の手により研ぎ澄まされてきた洗練の形がそこかしこに見られます。

堀部氏が建築後、5年、10年経った住宅に訪問した話をSNS等で見ると、快適な暮らしぶりと、新築の頃以上に時を経て魅力を増した住宅の佇まいに心打たれます。実際に建てて暮らしている人が皆「住みやすい」「暮らしやすい」と言われていることからも、堀部氏の住宅設計の人気の理由がわかります。

無駄を省き、質の良い自然の素材で光と影と風を感じる心地良い空間を創り、長く愛してもらえる場所とする、という氏の建築のスタイルは、伝統建築を手がける宮大工である私たちも強く共鳴するものです。

本当に良いもの、幸せな暮らしとはどういったものか、ここに一つの答えがあると感じています。

建築家 堀部安嗣氏

1967年 神奈川県横浜市生まれ。
1990年 筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業。
1991−1994年 益子アトリエにて益子義弘に師事。
1994年 堀部安嗣建築設計事務所を設立。
2002年 第18回吉岡賞を「牛久のギャラリー」で受賞。
2016年 日本建築学会賞(作品)を「竹林寺納骨堂」で受賞。
2007年−京都造形芸術大学(2020年4月より、京都芸術大学に校名変更)大学院教授。
2021年 2020毎日デザイン賞受賞。
2022年−放送大学教授。

代表作
「南の家」(1995年)
「ある町医者の記念館」(1995年)
「伊豆高原の家」(1998年)
「KEYAKI GARDEN」(2008年)
「イヴェールボスケ」(2012年)
「阿佐ヶ谷の書庫」(2013年)
「竹林寺納骨堂」(2013年)
「鎌倉山集会所」(2015年)
客船「ガンツウ」(2017年)など

著作
堀部安嗣の建築 - form and imagination」(2007年、TOTO出版)
書庫を建てる」(2014年、共著/新潮社)
堀部安嗣作品集 1994-2014 全建築と設計図集」(2015年、平凡社)
堀部安嗣 建築を気持ちで考える」(2017年、TOTO出版)
堀部安嗣 小さな五角形の家 全図面と設計の現場」(2017年、学芸出版)
住まいの基本を考える』(2019年、新潮社)
ガンツウ|guntû」(2019年、ミルグラフ)など

©Tetsuya Ito

Official site/SNS

建築家、大工、職人がチームとなって創り上げる

堀部先生は日本の伝統建築の技を深く理解し、格別の敬意を払われてる建築家です。建築の現場では、時に軽く観られ、不当な扱いを受けることもある私たち職人ですが、先生の職人に対する愛とリスペクトは一度でも一緒に仕事をした者なら皆、感じていることと思います。

職人の技は日々の鍛錬によって身に付けたものです。その志と努力を知り、本当に良いものを生み出すためのチームの仲間として認め合う。一つの建物を完成させるには、多くのメンバーがそれぞれのポジションでそれぞれの力を発揮しなくてはなりません。皆が同じ目標に向かって心を一つに取り組むこと。それは、優秀なスポーツチームが愛と友情の絆で強く結ばれているのに似ています。

茶寮「石尊」の建築では、堀部先生より塗料として日本に古来からある素材である柿渋を使うという提案がありました。どうしたらイメージ通りのものにできるのか。京都から柿渋を取り寄せ、塗り方、量、時間などいろいろと試してみました。この色がいい、いや、こっちのがいい。議論を重ねたことも、美しい作品に仕上がってくれた今、楽しい思い出です。

柿渋のテスト

大量の柿渋を取り寄せたので柿渋屋さんがわざわざ「何に使うのですか?」と聞かれてきて、説明すると大変に驚かれ、「ぜひ出来上がりを見たい」と言われました。

自由な発想で伝統的な家づくりに新しいニュアンスを加え、住む人の心に寄り添う空間を描く。それも全て日本の伝統的な建築をよく知り、リスペクトするからこそできることなのです。

長い時間をかけて形作られてきた「伝統」という形の先にこの先の形がある。この国の風土と人に合うのはやはりどこか遠いところから持ってきたスタイルではなく、この地で育まれたものであると信じ、伝統の技を活かした家づくりにチームで取り組んでいます。

柿渋で染められた壁と天井に包まれて執り行われたオープニングの儀式